Banner

2024–25年 FDA CDER IND活動の最新動向

October 29, 2025

Editor’s Note

米国のイノベーションエンジンが2025年に入る中、FDA CDERのデータは明確なストーリーを示しています。R&Dの成長はもはや量ではなく「フォーカス」が重要です。IND(治験薬新薬申請)の提出件数は増え続けていますが、真の注目はバイオ医薬品、細胞・遺伝子治療、そして規制上の関与がより深く求められる希少疾患プログラムへとシフトしています。

本号では、FDAの最新CDER IND活動データ(2020–2024年)を詳しく解説し、スポンサー企業の勢いが最も強い領域を探り、今後の申請戦略にどのような示唆があるかを整理しています。

IND活動の概要

イノベーションは安定、成長はやや鈍化

2024年、FDAの医薬品評価研究センター(CDER)は、医薬品および非バイオシミラーバイオ医薬品に関するアクティブINDを14,870件報告しました。2023年の14,622件からわずかに増加(前年比+1.7%)です。このうち、商業用INDが9,698件、研究用INDが5,172件で、探索段階と産業主導開発のバランスが浮き彫りになっています。

 

一方、バイオシミラーINDは依然として限られており(アクティブ90件、商業用89件)、米国のR&Dが模倣よりも革新に重きを置いていることを示しています。安定的かつ選択的な成長パターンは、パイプラインの成熟を示唆し、資源が高インパクト治療領域に集中しつつあることを示しています。

新規IND提出:初期R&Dの健全性の指標

2024年、CDERは医薬品および非バイオシミラー医薬品で1,855件の新規INDを受理しました。内訳は商業用1,139件、研究用716件です。バイオテック業界全体で資本制約があるにもかかわらず、この流入は初期段階の活力が維持されていることを示しています。

 

一方、バイオシミラーの提出は合計15件(すべて商業用)にとどまり、安定的ながらもターゲットを絞った開発環境が続いていることを示しています。既存企業からの関心は根強く、新規参入者の急増はまだ見られません。

過去5年間の傾向:拡大から最適化へ

医薬品・非バイオシミラーバイオ医薬品IND 前年比(%) バイオシミラーIND 前年比(%)
2020 12,935 77
2021 13,810 +6.8% 79 +2.6%
2022 14,268 +3.3% 82 +3.8%
2023 14,622 +2.5% 84 +2.4%
2024 14,870 +1.7% 90 +7.1%

2020–2024年で、アクティブINDは全体で15%増加(12,935件 → 14,870件)し、5年連続の拡大を記録しました。しかし、成長は加速から最適化へと明確にシフトし、前年比は2021年の+6.8%から2024年の+1.7%に減速しています。

 

一方、バイオシミラーは再び勢いを増し、アクティブINDは77件から90件に増加(総計+17%)、2024年は過去4年間で最も高い前年比成長率(+7.1%)を記録しました。バイオ医薬品の特許が切れる中で、バイオシミラーが静かに競争市場の準備を進めていることが示唆されます。

Quick Insights

• R&Dエンジンは拡大中もやや冷却:IND成長は5年連続でプラス、ペースは緩やかでもイノベーションは持続。

• バイオシミラーは静かに加速:前年比+7%はスポンサーの信頼回復と、リファレンスバイオ医薬品以外への多様化を示す。

• 商業用 vs 研究用の比率:2024年は医薬品・バイオ医薬品INDの65%が商業用、35%が研究用で、業界投資の一貫性を示す。

• 新しいパイプライン流入:新規提出1,855件は、2025–26年の試験開始や注目治療領域の先行指標となる。

IND活動を形作る戦略・規制トレンド

FDAの2024年データは、ダイナミックかつ成熟するイノベーション環境を示しています。バイオ医薬品と先進治療が注目を集める一方、低分子医薬品は徐々に存在感を弱めています。以下に、スポンサーが米国開発プログラムを設計・資金調達・位置づけする際の5つの重要な変化を示します。

新興トレンド 観察 戦略的示唆
バイオ医薬品は引き続き成長 非バイオシミラーバイオ医薬品INDは4年連続で安定成長 抗体、組換えタンパク、融合技術のパイプラインは高リターン投資ゾーンであることを確認
細胞・遺伝子治療が拡大 2024年の提出は細胞・遺伝子治療INDの比率が高く、CDERとCBERの協調が進む CMCや比較性の複雑性に早期対応することで、FDAのガイダンス活用が可能
希少疾患・オンコロジーが主流 アクティブINDの約40%が希少疾患またはがんを対象 希少疾患領域での試験施設・患者募集競争が激化
低分子薬は徐々に減少 中枢神経系・代謝疾患のIND提出は減少傾向 資本・規制注目は高価値のバイオ医薬品・標的治療へ移行
AI支援薬物設計の登場 AI駆動の分子設計やターゲット選定を参照するINDあり FDAはデータの出所やアルゴリズム検証を精査、2025年に新たなレビュー期待

より広い視点

FDAのCDER INDデータは、米国イノベーションの方向性を示す先行指標です。イノベーションのフロンティアは上流に移行しており、スポンサーは先進バイオ医薬品やプラットフォームベースのR&Dを活用し、IND成長率が鈍化しても価値創出を持続しています。

 

同時に、FDAの監督体制も進化しています。特に細胞・遺伝子治療(CGT)の分野では、CDERとCBERの責任分担が明確化され、IND前段階での規制対応の予測可能性が向上しています。

 

要するに、INDフェーズは単なる行政上のマイルストーンではなく、臨床・規制上の戦略的な転換点になりつつあります。

スポンサーにとっての示唆と次のステップ

FDAのIND統計は活動の反映だけでなく、規制の注力や投資家信頼の行方を予測する信号でもあります。スポンサーは以下のステップで、この情報を競争優位に変えることができます。

 

  1. パイプラインのベンチマーク:自社INDポートフォリオをFDAトレンドと比較し、過剰・過少投資の治療カテゴリーを特定してR&D戦略を再調整。

 

  1. 早期対応:CGT、AI活用プログラム、複雑バイオ医薬品の期待値を明確にするため、Pre-INDやINTERACT会議を優先。

 

  1. バイオシミラー競争への備え:2025–26年の相互適合性やラベリング動向を予測し、ライフサイクル戦略と防御戦略を設計。

最後に

FDAの2024年IND状況は、着実な成長、複雑化の進行、バイオ医薬品・先進モダリティへの明確なシフトを反映しています。スポンサーにとって、成功の鍵は量ではなく精度です――適切な科学を、適切な規制戦略と、適切なタイミングで組み合わせること。

成長は安定化しつつありますが、イノベーションは深化しています。

参考文献

Analysis and interpretation by BLA Regulatory, LLC, based on FDA-published data.